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5つのパンと2匹の魚

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銅取引から伝道者へ

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 69歳のマイケル・ファーマーは、銅取引の世界では知られた存在。銅市場を中心に運用するヘッジファンド「RKキャピタル・マネジメント」の創業者で、金属取引業界で最も成功した人物の一人。彼はまた熱心なクリスチャンとして、悩める金融業界関係者らに神の道を説く伝道者でもある。

 RKの運用額は2300億円。高校卒業後、18歳で銅の仲買会社に入社。4歳のときに亡くなった父親も同じ会社で銅のトレーダーだった。どの顧客からいくら受け取ればいいのかを計算することから職業人生が始まった。仕事の飲み込みは早く、20代前半でトレーダーへと昇格。その後は同業他社を渡り歩きそのたびに地位と収入は上がった。

 そして突然、35歳のときに「神様の声」を聞いた。「マイケル」。ある晩、眠りの中で誰かが呼ぶ声が聞こえた。直後、強烈な光に包まれた。神様のことなど、ほとんど考えたこともなかったが、神様が自分に呼びかけていると実感した。突然現れた光に驚きながらも、その光は「ずっと前からそこにあり、自分の目が見えていなかっただけなのだ」と悟った。自宅近くの英国国教会の門をたたき、十字架と共に歩む人生が始まった。

 急に訪れた変化に妻は最初驚き、戸惑った。だが、後戻りはできなかった。聖書の勉強グループに入会。キリスト教系の慈善団体に参加し、自殺志願者の電話相談を受けるボランティアを始めた。1991年には仕事の傍ら、金融街シティーの教会で事務を取り仕切る教区委員となり、10年以上務めた。仕事では変わらず成功を収め、2005年には自らヘッジファンドを立ち上げた。

 ヘッジファンド業界は、一方の損失が他方の利益になる弱肉強食の世界。ファンドを始める前は顧客の注文の取り次ぎと自己資金での運用だけだったが、今度は顧客から7預かった資金を増やさなければならない。銅を投機対象の一つとしてしか見ていない多くのファンドと違い、一生を銅取引の世界で過ごしてきたファーマーは、生産者から利用者、運輸会社から倉庫会社まで、関連するすべての業種に通じている強みがある。世界のどの地域で需要が伸びて、どの地域で供給が追い付いていないのか。現物の動きから分析するRKは、他社の運用成績が伸びていない時でも、二桁成長を遂げた。競争相手から標的にされるのは時間の問題だった。

 攻撃が始まったのは2007年1月。他の複数のファンドがRKの保有する銘柄を狙い打ちして猛烈な売りを仕掛けてきた。競争相手の戦略は、徹底的な売りを浴びせて安値で放出を余儀なくさせ、自らが買いたたくというものだった。どの銘柄をどれだけ保有しているかは企業秘密だが、顧客向けの運用報告書が流出し、そこから持ち高が計算された。

 運用資産はみるみる目減りし、半月で3割もの富を失った。「悪夢だった。どうしたら生き残れるのか、わからなかった。」ここでもすがったのは神だった。「これはきっと神様が与えてくださった試練なのだ。だとすれば、結果は良いものになるに違いない。」値下がりしていた銘柄を手放し、損失を受け入れた。それだけでなく、出資者には前年度の運用報酬の大半を払い戻した。出資者の一部は、返す義務のない報酬まで返還した対応を評価して取引を続けてくれた。「自分を謙虚にしてくれる貴重な経験だった。まさにそのとき、私が必要としていたのは試練だった。」主にシティーの教会で説教を続ける。

              ~ 2014年8月30日 秋田さきがけ新報より ~
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by carbondalle1996 | 2014-09-13 06:32 | 日記 | Comments(0)
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