あなたを訴えて、下着を取ろうとする者には、上着をも与えなさい。(マタイ5章40節)
私たちは下着の上に上着を着ていますから、上着を取らずに下着を取るというのはちょっとおかしな話だと思うかもい知れません。しかしこれは、身ぐるみをいっさい奪う追いはぎではなく、借金のカタとして訴訟している場合のことです。
貧しいユダヤ人でも下着の換えはもっていたそうです。しかし上着は1枚しかもっていませんでした。ここでいう上着とはマントのように長くて、昼はユダヤ人はこの上着をマントのように羽織って歩き、夜寝る時は掛け布団代わりにして寝たそうです。このようにユダヤ人にとって上着は大切なものでした。ですから律法では、上着は借金のカタに取ってはならないとされており、もし取ったとしても夕方までに返さなければならないとされていました。
イエス様はそのような大切な上着でさせも、下着を取ろうとする者に対しては与えなさいと言いました。上着を持つことは人としての当然の権利ですが、イエス様はそのような当然の権利も主張せず、相手に与えることによって愛の律法を完成させなさいとおっしゃったのです。
賀川豊彦先生のことばをご紹介します。
一枚の最後に残りしこの衣、キリストのためにはなお脱がんとぞ思う。
私たちは自分の手にあるものをなかなか差し出すことができない者です。手の中にあるものを、キリストのために差し出してゆくとき、主は私たちを大いに祝福してくださるのだと思います。