ヨーロッパにはたくさんの小国と呼ばれる小さな国がありますが、その1つにデンマークという国があります。面積は九州とほぼ同じくらいです。人口は540万人、これは東京都の半分ほどの人口です。まさに小さな国です。しかし、この小さな国がとても大きな経済力をもっています。食料自給率は300%で、エネルギー生産率は130%で余った30%を外国へ輸出しております。日本は世界第3位の経済力をもっていますが、国民一人当たりの経済力を表すGDPに直しますと、この小さな国デンマークよりも劣ります。そのような豊かな国デンマークも昔はとても貧しい国でした。
1864年のドイツとの間で起こった戦争によって、最も肥沃であった南部の土地は奪われ、残されたのは荒地だけというものでした。農業をしようにも作物が生えないような痩せた土地でした。しかし、そのような絶望の中で一人のクリスチャンが立ち上がりました。彼の名をエンリコ・ダルガスと言います。彼は戦争に敗れ、荒廃した祖国を見て、神にある希望を見ました。
「今やデンマークにとって最悪の日なった」と彼の同僚はいいました。「まことにそのとおりだ」とダルガスは答えました。「しかしながらわれらは外に失ったものを内において取り返すことができる。君と私との生存中にわれらはデンマークの荒野をバラの花咲くところとしよう」と答えました。彼は人々が剣をもって失ったものを鋤(すき)をもって取り返そうとしました。敵国に対して戦争を計画するのではなく、鋤(すき)と鍬(くわ)とをもって残った領土と闘い、これを田園と化して敵に奪われたものを補おうとしました。
まず最初にダルガスは土地に溝を掘り、用水路を作りました。そこに水を流し、荒地の植物を抜き取り、じゃがいもや牧草を植えました。次にダルガスは荒地を緑に変えるべく植林事業を起しました。しかし、痩せたデンマークの土地に合った樹がなかなかみつかりません。もみの樹が良いということになり植えましたが、数年で枯れてしまいました。そこでアルプス産の小さなもみの木とノルウエー産の大きなもみの木を交互に植えたところ成功しました。
しかし、今度はもみの木はある程度まで成長しますが、それ以上成長しないという問題にぶつかりました。そこである程度成長した小さなもみの木を抜くことによって、大きなもみの木は生長し、もみの木の森となりました。こうして荒廃したデンマークの土地が緑の土地へと変わりました。
植林の効果は単に木材の収穫に止(とど)まりません。樹木のなき土地は熱しやすくして冷めやすくあります。ゆえにダルガスの植林以前においてはユトランドの夏は、昼は非常に暑くして、夜はときに霜を見ました。四六時中に熱帯の暑気と初冬の霜を見ることでありますれば、植物はたまったものでありません。その時にあたってユトランドの農夫が収穫成功の希望をもって種えた植物は馬鈴薯、黒麦、その他少数のものに過ぎませんでした。しかし植林成功後のかの地の農業は一変しました。夏期の降霜はまったく止みました。今や小麦なり、砂糖大根なり、北欧産の穀類または野菜にして、成熟せざるものなきにいたりました。デンマークは大樅(おおもみ)の林の繁茂のゆえをもって良き田園と化しました。木材を与えられし上に善き気候を与えられました、植ゆべきはまことに樹であります。
しかし植林の善き感化はこれに止まりませんでした。樹木の繁茂は海岸より吹き送らるる砂塵の荒廃を止めました。北海沿岸特有の砂丘は海岸近くに喰い止められました。
こうして食料自給率300%、エネルギー自給率130%、という奇跡の経済成長を遂げたのでした。それは一人のクリスチャンが聖書のみことばに立ち上がったことから起こりました。